昼間の信号機

パパ活で貯金を作っている、メンヘラ社会不適合者の女です。主にパパ活での出来事などを書いています。

人間嫌いのパパ活日記㉑-初体験を好きな人にあげれば偉いのかよ

風俗で童貞を捨てるのが卒業ではなく中退なら、処女をお金で売って捨てるのはさしずめ喪失ではなく紛失といったところだろうか。

 

私は処女を金で売った。相手は元定期のパパだ。行為前に札束を受け取ったこと、潔癖気味の元定期が衛生を気にしてビジネスホテルで事に及んだことを除いては、特筆すべきこともない至って普通の初体験だった。

 


諭吉──もうすぐ栄一になるが、あれは5人くらいまでならテンションが上がるが、25人もまとめて受け取ると「さ、札束……」という気持ちになる。札束を手にした時の感情を知れたのはなかなか良い人生経験だったのではないだろうか。

パパがホテルにチェックインの手続きをし、今まで行った場所やこれから行きたい場所の話なんかをしながら部屋に入った。ホテルに置いてあった水を飲んで「緊張する?」みたいな型通りの雑談をしたあと、「先に渡しておくね、確認のために数えて」とパパに札束をいただいた。確かにそこには25人の諭吉がいた。

 


服を脱ぎ、シャワーを浴びる。ホテルでシャワーを浴びるとき髪を濡らさない、というのを知ったのは、ほんの少し前のことだった。濡れた髪を乱して行為に及んだら破滅的で良いだろうな、と思っていただけに、少し残念だった。アメニティが充実しているのはビジネスホテルだからなのか、ラブホにもこういうものはあるのか、ラブホに入ったことのない私には分からなかった。備え付けのガウンを着て風呂を出た。

 


パパがシャワーを浴びるのを待っている間は、軽く化粧を直したり、水を飲んだりしていた。電気や空調を調節しておきましょう、とインターネットに書いてあったが、やり方がよく分からず諦めた。

 

 

 

パパがシャワーから出てきた。同じガウンを着ていた。

「緊張してる?」

「少しだけ……」

そんなやり取りをする。

「座って」

とパパが言い、ガウンを捲った。

「おっぱい大きいね。Eカップくらい?」

「すごい……よく分かりますね。ちょうどEカップです」

「やっぱり。いつからこんなにおっぱい大きいの?」

「中学生くらいから……」

ちゃんとしたAVって見たことがないのだが、AVの導入ってこんなかんじなんじゃないだろうか。もしかしてAVの性知識しかない人類か?と訝しんだが、私のカップ数を当てているあたりそういうわけでもなさそうだ。

「これ持ってきたんだ」

そう言って、パパが鞄から透明なボトルを取り出した。プッシュ式の頭がついている。

「ローション。始めてって言ってたし、あった方が痛くないかなと思って」

「ありがとうございます。……なんか、このご時世だとアルコール消毒液に見えますね」

「確かに……」

色気のないコロナジョークを言う私。妙に納得してボトルを見つめるパパ。……ごめんって。

 

 

 

──と、これ以上仔細に事を記しても官能小説になるだけなので、ここから先のことを書くのはよそう。というか書いているこっちが恥ずかしい。このままセックスの描写に入ると思った? 残念!

一つ言うとすれば、やっぱり本番よりもフェラよりもキスが気持ち悪いな、ということだろうか。ピンサロに体入した時も思ったことだが……。好きな人とすれば何か違うものなのだろうか?


処女を失ったら世界が変わると思っていた。とりわけ私は金で売ったのだから、良くも悪くも大きな変化があるだろうと、今までとは全く違った世界の見え方をするだろうと、そう思っていた。

しかし、事が済んだあとの世界はあまりにも今までと地続きだった。少しくらい後悔とか罪悪感とか、「穢れてしまった」みたいな感覚があるものだと思っていたが、全くと言っていいほど皆無。いつも通り「今日はありがとうございました!」みたいなメッセージを送って、鞄に入った大金の心配をしながら帰路に着くだけ。

「初めてドカタ(パパ活用語でパパとセックスすること)した時は吐いたなぁ、今は全然平気だけど」みたいなツイートをよく見る。吐き気すらしなかった私は、どうしたら良いのだろうか。切迫した事情もないのに性を売って金を稼いだこと、お互い納得した正当な取引だから罪とまでは言わないが、多少の罰があるものだと思っていたのに。──これでは、まるで釣り合いが取れない。


このまま風呂屋に沈んでもいいかもな、などと、そんなことを考える私であった。